自分でできた!厄介な相続の手続き

いろんなこと

最近父が他界して、初めて相続というものを経験しました。
相続にはいろいろと面倒な手続きが必要ですが、特に複雑なのが相続税の申請です。
普通だと相続税の申告を税理士に依頼するみたいですが、費用は数十万円からかかるようです。
できるならその費用を抑えたいと思い、頑張ってひと通りの手続きを自分でやってみました。
同じ考えの人は多いと思いますので、参考になればと思います。

相続人の確認

まず、被相続人の死亡時から遡って出生時までの戸籍謄本一式を集めます。
これは法定相続人が誰なのかを明らかにするために必要になります。

最初に父の現在の本籍地のある市役所で戸籍謄本を取得しました。
そこには△△県△△市から転籍と書かれていたため、
次に△△県△△市役所に出向いて戸籍謄本を取りました。
市役所の所在地が遠方の場合には、郵送での取得も可能です。

私の場合は、その戸籍謄本に父の出生の記録が書かれていましたので、
2カ所の市役所を回るだけで済みました。
ちなみに戸籍謄本の手数料は高いので、私は1部だけ取得しました(3,000円くらいかかりました)。
そのため各種申請の際には、原本還付してもらう予定です。
入手した戸籍謄本を確認したことで、法定相続人は母と兄弟2人の計3人と確認できました。

被相続人の財産の確認

相続対象財産がどれくらいになるのか把握します。
主に、次のような財産があると思います。

・預貯金、現金
預貯金のある銀行などで残高証明書を作成してもらいます(手数料は1,000円前後)。
預金通帳でも亡くなった日時点での大体の残高は分かると思います。

・家屋、土地
毎年郵送されてくる固定資産税の納税通知書と一緒に固定資産税課税明細書が入っています。そこに固定資産税評価額が書かれているのでその金額を見ます。
家屋に関しては評価額そのままが相続税評価額になります。

一方、土地に関しては対象の土地が「路線価方式」「倍率方式」のどちらになるか調べます。
国税庁のホームページ(https://www.rosenka.nta.go.jp/)にある「財産評価基準書路線価図・評価倍率表」から対象の土地の路線価図を見ます。
土地の面する道路に路線価が設定されていれば、路線価方式で評価します。
路線価が設定されていなければ倍率方式となります。
その場合は、路線価方式と同じページから評価倍率表のページに行けますので、そこから対象の土地の倍率を調べます。

もし固定資産税課税明細書が手元に無い場合は、市役所で固定資産評価証明書を取得することができます。
まずは相続対象の土地・家屋を特定するため、法務局で相続対象の登記事項証明書を取得します。
または登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)から登記情報を入手することもできます。ネットで取得できるし、手数料も安いのでこちらの方法もお薦めです。
相続対象の土地・家屋が判明したら、その土地・家屋の固定資産評価証明書を取得します。

私の場合も固定資産税課税明細書がなかったので、登記情報提供サービスから登記情報を入手し、市役所で土地・家屋の固定資産評価証明書を取得しました。
また対象の土地には路線価が設定されていなかったので、固定資産評価証明書の金額に倍率を掛けて相続税評価額を計算しました。

また小規模宅地の特例というものがあり、特定住居用宅地(自宅)の面積が330㎡まで80%の減額が可能になります。
その対象に当てはまるので、土地の相続税評価額に20%を掛けた金額を土地の最終的な評価額としました。

・家庭用財産
自動車や家具、貴金属などの評価額を求めます。
私の場合は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」を見て、現在の評価額を求めました。
また自動車は下取りした場合の値段を出してもらって計算しました。
高価なものが存在しなかったので、すべてまとめた金額としました。

・生命保険金
保険金の支払通知書の金額になります。
死亡保険金は500万円×法定相続人の数まで非課税のため、
私の場合は死亡保険金から1,500万円を引いた金額を財産として計上しました。

上記の他にも有価証券、ゴルフの会員権、生前贈与(3年以内)などいろいろな種類の財産が計算対象になりますが、父は所有していなかったので計算は楽でした。

相続対象財産が判明したら、相続税の対象となるのか次の式で判断します。
非課税枠=3000万円+600万円×法定相続人の数
財産の合計が非課税枠以下であれば相続税の申告は不要です。
非課税枠を超える場合は、超えた金額に対して相続税が発生します。
私がすべての相続対象財産を計算した結果、わずかに非課税枠(4,800万円)を超えていることが判明しました。

相続配分の決定

もし遺言書があれば財産の配分はそれに従いますが(遺留分を除く)、
遺言書がない場合には、誰がどの財産をどれだけ取得するのか相続人で協議し、
その内容を遺産分割協議書に書きます。
遺産分割協議書の記入例はいろいろなサイトで公開されていますので、そちらを参照してください。

遺産分割協議書には相続人全員の住所、署名、捺印(実印)が必要です。
相続人全員の分を作成するようですが、配分で問題が起きる可能性がなければ1部でもいいと思います。
それと併せて、相続人全員の印鑑証明書と相続人全員の現在の戸籍謄本を揃えておきます。

私の場合はすべての財産を母が相続することにしました。
母が相続する分に関しては「配偶者の税額の軽減」が適用されるためです。
配偶者の税額の軽減とは、配偶者の相続額が1億6,000万円まで非課税となる制度です。

尚、その配偶者が亡くなって二次相続で子供が相続する場合、法定相続人が減って非課税枠が下がるため、配偶者の税額の軽減を使わなかった時より相続税が高くなる可能性もあります。
そのため、この制度を使うかはよく考えたほうがいいでしょう。
私はその際に相続税がかからないように、母にはどんどんお金を使うように言ってあります。

銀行預金の相続手続き

預貯金は名義人が死亡すると相続財産となり、勝手に引き出すことができなくなります。
また銀行ではその口座を凍結します。
それを相続人の口座へと移すための手続きが必要となります。
まずは口座のある銀行の窓口に行って、相続の相談をしましょう。
そこで準備すべきものを教えてもらえるので、その通りに進めれば問題ありません。
手続きが完了すると預貯金は指定された相続人の口座に移され、提出した預金通帳は返却されます。
手続きに必要なものは銀行によって違いますが、主に次のようなものです。

・相続手続依頼書(銀行によって様式が異なる)
・遺産分割協議書(法定相続人全員の署名・捺印があるもの)
・被相続人の戸籍謄本(全部事項証明書)(出生から死亡までの連続したもの)
・相続人全員の戸籍謄本(全部事項証明書)
・相続人全員の印鑑登録証明書(発行後6ヵ月以内のもの)
・通帳、キャッシュカード

不動産の所有権移転登記

法務局で不動産の所有権を相続人に移転するための手続きをします。
申請に必要な書類は以下の通りですので、申請までに準備しておきます。

・登記申請書(所有権移転)
・相続関係説明図(戸籍謄本の原本を返してもらうために必要)
・相続登記の対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)
 登記情報提供サービスで取得した登記情報でも可
・被相続人の住民票の除票(本籍の記載があるもの)(原本還付可)
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式(原本還付可)
・相続人全員の現在の戸籍謄本(原本還付可)
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書(原本還付可)
・物件を取得する相続人の住民票(原本還付可)
・固定資産評価証明書(原本還付可)
・登録免許税(不動産の固定資産税評価額×0.4%)

登記申請書は法務局のホームページ(http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/minji79.html)から申請書様式をダウンロードして使用しました。
また相続関係説明図はネット上の例を参考にして作成しました。

原本還付してもらう場合は書類のコピーを取って、まとめて左の2か所をホッチキス止めします。
そして頁の継ぎ目に押印して、1ページ目に「上記は原本と相違ありません」と記入し、署名押印をします。

法務局には相談コーナーがあるので、申請内容に間違いはないか、必要書類に問題がないかを確認してもらうといいでしょう。
尚、相談コーナーは予約でいっぱいのことが多いので、前もって予約してから行ったほうがいいです。
またこの時に原本還付の旨を伝えておきましょう。

特に問題を指摘されなければ、登録免許税分の収入印紙を購入して、登記申請書に貼り付けて申請すれば手続きは終了です。
2週間程度で新しい所有者の登記識別情報を受け取ることができます。
また原本還付をお願いしていた書類も一緒に返却してもらえます。

相続税の申告

相続手続きの締めくくりとして、被相続人の本籍のある税務署で相続税申告をします。
相続税の申告は死後10か月以内にする必要がありますので、余裕をもって準備しましょう。
申告に当たり私が記入した申告書は以下のものです。
「2.被相続人の財産の確認」で計算した相続財産の内容を、この順番に記入していきました。
尚、必要な表は財産の所有状況によって異なりますので、どれに該当するのか確認が必要です。

第9表 生命保険金などの明細書
第11・11の2表の付表 小規模宅地等についての課税価格の計算明細書
第11表 相続税がかかる財産の明細書
第13表 債務及び葬式費用の明細書
第15表 相続財産の種類別価額表
第5表 配偶者の税額軽減額の計算書
第1表 相続税の申告書
第2表 相続税の総額の計算書

これに添付する書類は次のものです。

・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本(コピー可)
・相続人全員の印鑑証明書
・遺産分割協議書(コピー)

以下は証明するために持っていきましょう。
・相続人のマイナンバーカードまたは通知カード(必須)
・相続人の身元確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)(必須)
・固定資産税評価証明書、登記簿謄本など
・金融機関の預金残高証明書、預金通帳
・保険金の支払通知書
・その他の取得した財産が分かる書類
・葬式費用の領収書
 お坊さんに渡した心付けの金額もメモに残しておいたほうがいいです
・医療費の領収書

税務署には相談窓口がありますので、申請書や添付書類の相談をしてから申請するのがいいでしょう。相談窓口は事前予約制になっているところが多いです。

最後に

今回の相続税申告は配偶者の税額軽減を受けたので、普通の相続税申告に比べると簡単なので自分でできました。
そのため相続税を支払う必要がある人にはあまり役に立たないかもしれません。
参考程度に見て頂ければと思います。

また、当記事は素人が経験に基づいて書いたものであり、
解釈に間違いがあるかもしれませんので、その点はご了承ください。
また法律が変わっている可能性もありますので、最新の法律を確認してください。

今回の相続税申告をするにあたり、福田真弓さん著『自分でできる相続税申告』を参考にしました。